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虚呂路

虚呂路

                          やたらと自己分析に耽っていた頃。 今にして思えば、あれは『分析』と同時に『構築』でもあり、きっとあれこそが己の酷く短い思春期だったのだと気付いた今日この頃。
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 予定外のことが色々起こって、ようやく更新。
 気にかけてくれた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした。
 一体事前の宣言は何処へやら。そうそう、今年読んだ本も追記しました。
 今回紹介するのはMMOとしても有名な「ドラゴンラージャ」です。

 韓国発のファンタジー。著者イ・ヨンド氏。ホン・カズミ氏翻訳。
 ライトノベル以外で、剣と魔法。ドラゴンやゴブリン等の幻想生物が
 登場する物語といったら、何を思い浮かべるだろうか?
 ここ数年のファンタジー映画ブームを考えると、
 おそらく「指輪物語」等を上げる人が多いと思う。
 そもそもドラゴンや魔法の類は北欧で生まれたのだから、
 そちらの作品が多くなるのは当然だろう。
 しかし、韓国。なんでも彼の地では100万部を突破したというこの作品は、
 剣も魔法も幻想生物も神様も盛りだくさんのファンタジー大作だ。

 初めて書店で見かけたときには
 「最近韓流が人気だしなぁ。こっちの方にも進出してきたのかな」と思った。
 買おうとは考えもしない。
 貧乏な私にとっては文庫本ですら買うのにちょっとした覚悟が必要なのだ。
 というか、はっきり言ってそんなに期待もしていなかった。
 しかし、漫画が殆どを占める書店にすら置いてあるのを見て、少し気にかかる。
 一応名前だけは確認しておき、図書館にあったら借りてみるか、と思って数日後。
 その日のうちに読み終えた1巻を手にし、久々にいいファンタジーを読んだなぁと、
 私は2・3巻の貸し出し予約を申し込んでいた。

 あらすじはこんな感じだ。
 バイサス王国と隣国ジャイファンの戦争が続く世界。
 バイサスの西の端にあるヘルタント領地では、
 凶悪なブラックドラゴン「アムルタット」が猛威を振るい、人々を苦しめていた。
 それを救うべく、国は一人の幼い少年を征伐へと送り出す。
 無論ただの少年ではない。
 「ドラゴンラージャ」という、凶暴なドラゴンを支配下に置くことが出来る
 特殊な能力を持った家系「ハルシュタイル」の人間だ。
 僅か10歳の子供とはいえ、王家のホワイトドラゴン「カッセルプライム」と
 多数の兵士を従え、勝利は確実に見えた。
 だがホワイトドラゴンは殺され、兵士達は人質となってしまう。
 開放するには、アムルタットに身代金の宝石を払わなければならない。
 しかし、貧乏な領地にはそれほどの資金は無かった。
 そこで国王に資金の援助を請うために、首都まで使いを出すこととなる。

 ここで、主人公のフチを紹介しよう。
 17歳でロウソク職人の息子である彼は、機転の良さはあるが、
 剣術の心得があるわけでもない一般市民的な少年だ。
 だが、かつて母親をドラゴンに殺され、
 今回の討伐に参加した父親を人質に取られている。
 よって、父親を救い出すために、首都までの過酷な旅に出る決心をする。
 戦いの素人である彼がどうやって戦うのか。
 それは彼のはめている篭手に秘密がある。
 これは「オーガ・パワー・ガントレット」という一種の秘宝で、
 旅の魔法使い「タイバーン」から紆余曲折の末に譲り受けたものだ。
 はめた者に鬼のような怪力をもたらすため、それだけでも相当な脅威になる。
 彼に他には、ヘルタント城警備兵隊長の大男「サンソン」。
 森に住む博学で奇妙な読書家の中年男「カール」が共に旅に出る。

 12巻もある時点で、
 そのまま身代金を払ってめでたしめでたしとならないのは目に見えているだろう。
 この先についても書きたいのはやまやまだが、
 そう簡単に纏められそうにないので、実際に読んでもらいたい。

 公式サイト
 「指輪物語が世界を描いたものなら、ドラゴンラージャは人間を語るものだ」
 といった感じのことが書かれている。納得だ。
 キャラクターは皆個性に溢れ、様々な哲学的概念を物語から読み取れる。
 7巻の、あるキャラクターの問いかけに対するフチたちの答えは、
 人の存在の在り方について思索する良いきっかけとなった。
 話がフチの一人称で進められているのも良い。
 物事に対する彼の語りは物語を明るくすると同時に、
 そこには思索の火種となるユーモアや皮肉が含まれている。
 基本的に翻訳物はキャラの個性を感じにくいと私は思うのだが、
 これは翻訳者のホン・カズミ氏の腕によるところも大きいだろう。

 総括すると、お硬いファンタジーではなく、
 ライトノベルのように楽しんで読むことが出来るが、深い意味を持ちあわせ、
 かの有名な「ソフィーの世界」とは別の方向――学問としての哲学ではないが、
 哲学的な思考の入り口となるに十分なだけの内容を持ち合わせていると思った。

 外国ファンタジーにおいては、私にとってラルフ・イーザウ氏以来の最大ヒットだ。
 これ以外の作品は翻訳されていないが、日本でもこれだけの人気が出ている。
 きっとこの物語が終われば、他の作品も出版されるだろう。期待したい。

 どうでもいい追記
 物語のキーパーソン。
 「ハンドレイク」が未だに姿を現さないが(現すのかも分からんが)、
 「タイバーン」が実はそうなんじゃないかと思うのは私だけだろうか。
 あからさまに怪しい気がしてならないのだが。

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 ここ最近、今まであまり読んでいなかったSFをよく読んでいる。
 シン・マシンは2004年にハヤカワJコレクションから刊行された作品だ。
 著者は坂本康宏氏。

sinmachine.jpg 体の一部が機械化される奇病MPSに侵された世界。
 人類は突如発生したこの病を食い止めようと躍起になって
 治療法を模索したが、空気感染によって広がるMPSは
 ほぼ全ての人類へと侵食していった。

 だが、この病は特に身体に悪影響を及ぼすことも無く、
 むしろ素晴らしい能力をもたらした。
 MPSランニングと呼ばれるそれは、脳の機械化された部分によって
 罹患者同士があらゆる情報のやり取りが可能となるものであり、
 PCなどの器具は一切必要となくなった。

 いわば、究極の情報化社会の到来である。
 世界はこの能力によって一変し、ウイルスとの共存によって進化する道を
 人類は選択した。
 その一方、強い抵抗力によって罹患することの無かった人々(スタンドアロン)も
 ごく少数ながら存在し、
 彼らは情報の共有が出来ないが故に世界から隔絶され、
 「くだらないスタンドアロン」と差別を受けていた。

 主人公、国東 弾(くにさき だん)はそんなスタンドアロンの一人だ。
 「弾」という名に加えて、物事を一秒以上考えないという性格から
 「鉄砲玉の弾」の異名を持つ。
 雨に包まれた末梢Xという街に住み、何でも屋として危険な仕事をこなしつつ
 どうにか生活を続けている。
 彼がある女性を監視しろという依頼を受けたこと。
 そして双子の弟である魁がある病に冒されたことから物語は広がっていく。

 ……正直、
SFを侮っていたかもしれない。
 好みが分かれる話かもしれないが、自分が読んだSFの中では最も楽しめた。
 二転三転と明かされてはひっくり返る設定には驚嘆せざる負えない。
 戦闘シーンはかなりベタで、しかしそれ故に燃える。
 ただ虫っぽい生物が色々出てきたりして、描写も細かいので、苦手な人は注意。

 
 これは兄弟愛
 ――表現力の乏しい自分はこう書くしかないが、もっと深いモノだろう――
 がテーマの物語であり、生命と機械の境界線の物語でもあると思う。
 更に、著者が生まれて間もなく亡くなった第一子に捧げた物語なのだそうだ。
 本格SFの信奉者には評判が悪かったらしいが、(あまり好まない事だけれど)
 断言しよう。
 これは生命というモノについて深く考えさせてくれる、
 素晴らしい愛と命の作品だ。是非とも読んでもらいたい! 

 追記:シン・マシンを含めた、主にSF作品について
 素晴らしい感想を書かれている猫のゆりかごさんのブログをリンクに追加。

 ……やっぱりもう少し書こう(以下超ネタばれ)


denndeke.JPG
 というわけで読み直してみた。
 直木賞も受賞した芦原すなお氏の作品で、15年前のものだ。
 国語の資料集には紹介くらい載っているかもしれないな。


 高校入学直前の春休み。
 少年、藤原竹良は愛しい恋人をさらった黒衣の怪人を追って海へとたどり着く。
 怪人は三日月形の船に乗って逃げていくところだ。
 いきなり黒衣の怪人はするすると体を伸ばし、
 10メートル程の大きさに伸び上がると左腕を打ち払った。
 すると驚いたことに雲一つ無い青空は黒雲に覆われ、突如として雷鳴が轟いた!
 デンデケデケデケ〜〜〜!
 そこで彼は目が覚める。そう、いきなり夢オチである(笑)。
 デンデケデケデケというのは付けっ放しのラジオから流れていた、
 ベンチャーズの『パイプライン』という曲であった。
 妙な夢と相まってか、その音は彼にひどく強烈な印象を残すこととなり、
 ギター購入、バンド結成へと彼を走らせることになる。

 というオープニングはちょっと強引な気がしないでもないが、
 「八王子のレッドツェッペリン」のエンディングよりはマシだろう。
 話のノリはツェッペリンと比べるといくらか軽い感じ。
 例えば…ウォーターボーイズが好きな人なら結構楽しめると思う。
 ちなみに会話は方言で書かれている。より田舎臭い雰囲気が出ていて良い。

 ツェッペリンもキャラはなかなか出来ていたと思うが、
 こちらは更に個性的なメンバーだ。
 特にお寺の子でありながら、やたらとエロに通じていて、大の読書家でもあり、
 何処の大学だろうが楽勝で入れるくらいの学力を持っていて将棋にめっぽう強い
 とかいう何かよく分からんけど、何か凄いベース担当。合田富士夫が好きだ。
 他には男気溢れる通称「兄ちゃん」をに持つギターの名手。
 リードギター担当、白井清一。
 明石の蛸というあだ名を持っていて、太鼓を叩くことが半ば中毒になっている。
 温厚、従順、素直であるが故に強引に引っ張り込まれたドラム担当、岡下巧。
 恐るべき工学的スキルを備えた、無口で何考えているのか不明な技術担当、
 谷口静夫等が登場する。

 さて、結果としてだが、こちらの方が面白かった。適当なこと書いて申し訳ない。
 初めてこれを読んだのは確か中学一年の頃だったのだが、
 私は高校生になるまで音楽にほとんど興味を持っていなかった。
 だから、音楽をテーマにした小説もたいして面白く感じなかったのかもしれない。
 ……少々、強引だろうか。
 それでは、まだ当時は小学生向けの伝記や宮沢賢治ばかり読んでいたから、
 こういうものに慣れていなかったという方が妥当だろう。
 今となっては活字中毒者だとか本狂いだとか、
 名誉なんだか不名誉なんだかよく分からない称号を賜っているし、
 昔の本を読み直すのも面白いかもしれないなぁ。

 リンクに友人のサイトを置いてみる。ボーイズラブ系統のサイトなので注意。

 清水義範氏の短編小説集。えーと、これは11年前に出版されたらしい。
 書評は新刊についてあれこれ言うのが一般的な気がするが、
 ……まぁ問題はあるまい。そもそも新刊ばかり読める経済状況ではないのだ。
 …………論点がずれた気もするけれど、本題に入ろうじゃないか。

 さて、それにしても何だこの奇妙なタイトルは、と思う人もいるだろう。
 少なくとも私は思った。だからこそ手に取ったのかもしれない(笑)。
 TVニュースの金庫破りなどの報道でこの単語を聞いたことはないだろうか?
 『バールのようなもので破って進入したもようです』、
 とキャスターが言ったりしているのを見たことがある筈だ。
 この短編集のタイトルにして、収録されている全12の短編の一つ、
 「バールのようなもの」とはそのキャスターが口走った「バールのようなもの」に、
 ふと疑問を覚えた男の物語だ。
 何ともまぁアホらしい展開の話だが、なかなかにシュールで面白い。
 その他の短編も類を見ない方向性のものばかりで、
 大笑いとはいかなくとも、にやりと口元が緩んでしまうだろう。
 しかし、こんなネタから話を一つ創ってしまうのだから恐れ入る。
 自分とは発想とかが根本的に違いそうだ。
 いや、私はそんなこと考える以前に、
 まずはせめて話を最後まで書き上げるくらいはしないと駄目か…。

 回を重ねるごとに短くなっている気がするけれど、気にしてはいけません。
dc85bc0djpeg

←文庫版があるらしいね。

 著者のHP「清水家のお茶の間ページ」
 http://www.asahi-net.or.jp/~JF7Y-SMZ/

d3f54fa1.jpg 富士見ファンタジア文庫の作品にして、
 第17回ファンタジア大賞の佳作受賞作。
 著者は大楽絢太氏。イラストレーターは今野隼史氏。
 その名の通り七人の武器屋が活躍する作品だ。
 ちなみに一軒の武器屋に7人のオーナーという意味で、
 武器屋が7軒ではない(どうでもいいわ)。

 舞台は最強の生物ドラゴンが闊歩する世界。
 フランという街で奇跡の水「アモスの水」と偽って、
 水道水を売る詐欺を友人ジャンと共に働く少年。マーガス。
 物語は彼の一人称で進められる。

 内容は――ある日、いつものようにドラゴンキラー(竜退治の専門職)相手に
 水を売りつけた帰り道のことである。学校を卒業してからというもの、
 周りの友人達は次々と自分の道を見つけていくというのに、
 自分はこんな詐欺をしながらダラダラと過ごし続けていて良いのだろうか?
 自分の人生、これで大丈夫なのだろうか? と彼は思い悩んでいた。
 だが、やりたいことも目標も見つけることが出来ない。
 一体どうすればいいのか。そんなときにふと、あるチラシが彼の目に入る。
 それは武器屋新オーナー募集の貼り紙であった。
 『やりたいことが、見つからない。得意なことも、見つからない。
 夢中になること、もっとない。本当の自分がワカラナイ――。
 そんな悩める若人に、素敵な素敵なお話です』

 まさに、今の自分を指す言葉であった。
 心惹かれるようにマーガスはジャンを連れて、
 古ぼけた武器屋「エクス・ガリバー」に足を運ぶ。
 ――といった感じに話は始まる。

 この物語の一番の魅力は、
 おそらく読み手をガンガンと引き込んでいくノリとテンションの高さだろう。
 なんと言うべきか、ひたすらにやたらと熱い青春物語なのだ。
 正直、ところどころのパクリネタ
 (2巻登場のホリィ・ライブウィンドウや、4巻の舞台である天下一武器屋祭)や、
 設定の一部には突っ込みどころ満載なのだが、
 巻末の解説にもあるように「楽しい」というのは間違いない。
 実を言えば、自分は担当絵師である今野氏のファンであり、
 それ目当てで買ったようなものだったが、この作品はお薦めできる。
 読んだ後に、爽快で心躍るような心持ちになれるはずだ。

 現在は4巻まで刊行中。年末には5巻が出るだろう。
 著者曰く物語も佳境に入ったらしいが、全編通しての目的があるわけではない。
 (ある意味それぞれの未来を見つけることが最終到達点なのかもしれないが)
 よってどのようになるか予測は付かない。これからの展開が楽しみだ。

 絵師:今野隼史氏のHP 
http://www2.chokai.ne.jp/~frontier/index.html
 RPGツクールに関わるものなら知っているであろう、
 かの「アルファナッツ」のイラストレーターである。
 「ハッピーラッキーエントランス」という小説、イラスト、ゲーム。
 さらにはネットラジオも配信している恐るべき投稿コーナーが存在。
 少々分かりにくい場所にあるが、一見の価値あり。

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